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植物病原性カビの細胞周期を制御する遺伝子を発見

[2015年9月1日]

植物病原性カビの細胞周期を制御する遺伝子を発見

 生命環境科学研究科の久保康之教授、深田史美日本学術振興会特別研究員(博士後期課程2回生)の研究グループは、植物病原性カビの感染過程において細胞周期のG1期からS期への進行を制御し、感染成立に必須である因子の発見に成功しました。
 この成果により、世界中で深刻な被害をもたらしている植物病害に対する新規農薬の開発に貢献することが期待できます。

この研究成果は、世界的な植物科学専門誌「The Plant Cell」の8月28日付けの電子ジャーナル版に掲載されました。 http://www.plantcell.org/content/early/recent
 

【ポイント】

1.炭疽病菌のBUB2遺伝子は細胞周期のG1期からS期への移行を抑制する。
2.細胞周期が正常に制御されなくなると、細胞骨格制御に影響を与え、植物の防御応答の誘導をもたらす。
3.細胞周期をターゲットとした新規農薬開発に貢献できると期待。

【研究の概要】

 病害による世界の農業生産被害は10~20%にまで達しており、これは8億人の食糧に値します。そして、この植物病害の80%以上は、糸状菌(カビ・菌類)によって引き起こされており、植物病原性カビの攻撃から作物を保護することは、非常に重要です。炭疽病菌は、600種以上の農作物に感染し、世界中で深刻な被害をもたらしている植物病原性カビです。
 久保教授らは、炭疽病菌に存在するBUB2遺伝子の機能を欠損させると、細胞周期のG1期からDNA合成期であるS期への進行が早くなり、その結果、核分裂が早く行われることを発見しました(下図)。面白いことに、このBUB2遺伝子破壊株はセプチンやアクチンと呼ばれる細胞骨格の動態が異常になり、植物に対して防御応答を誘導することによって、植物への感染が低下することがわかりました。これらのことから、炭疽病菌におけるBUB2遺伝子による適切な細胞周期の制御が植物病原性カビの感染過程に重要な役割を果たすことが明らかとなりました。また、酵母や植物に感染しないカビのBUB2の相同遺伝子はG1期からS期への移行には関与せず、むしろ核分裂や隔壁形成に関与しているため、今回発見されたBUB2遺伝子の機能は植物に感染するカビが進化の過程で獲得してきた特徴的な現象であることが考えられます。
 細胞周期の有糸分裂を阻害する農薬としてベンゾイミダゾール系の薬剤がありますが、この成果により、細胞周期の異なるプロセスをターゲットとした新規農薬の開発に貢献すると期待できます。

図

【連絡・問合せ先】
京都府立大学大学院生命環境科学研究科
応用生命科学専攻 植物病理学研究室   教授 久保 康之     電話 075-703-5613


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