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【学長メッセージ】2016年 年頭にあたって

[2016年1月7日]

                   年頭にあたって
                                         2016年1月4日

 はじめに 存在の重みを受けとめて 正月とは本来、その年の豊穣を司る「歳神様」を迎える行事と言われています。この歳神様は、先祖の霊である「祖霊」が、年の初めに子孫の繁栄を見守る際の姿であり、年が明け、歳神様を迎えた祝福が、「明けましておめでとう」という挨拶になったということだそうです。
 そのような古来の風習に従って、「おめでとうございます」と申し上げたいところですが、ご承知のように年末に大変痛ましい事故が起こってしまいました。原因・背景がいかなるものであれ、ひとつの命が失われるという、取り返しがつかない事実をしっかりと胸に刻み、受けとめるところから、新年の誓いを立てていきたいと思います。
 事故については、直接的な原因とともに、間接的な要因・背景まで視野に入れて、命の重みに応える教訓を引き出し、必要かつ十分な対応を進めていかなければなりません。すでに学内全面飲酒禁止、クラブリーダーを中心とした学生研修など緊急対応と外的規制の強化からなる措置をとっているところですが、今後も、学生を対象とする教育的・学習的な取組と、安全管理上の体制強化、教職員の意識向上に向けた取組等が必要と考えます。

                   昨年1年間を振り返って

 昨年は、創立120年目という記念の年にあたり、11月の流木祭にあわせて、式典・記念講演等、新旧世代の交流も含め、実行委員会を中心とするみなさんのご尽力で、盛大に行うことができました。関連行事は2月の記念植樹など今後も続きますので、引き続きご協力をお願いします。
 教養教育共同化の取組は本格化し、科目の充実、3大学の学生交流の深化、学修の質を高める学生の自主企画や、府民向けの公開講座などが行われました。和食文化の保護・継承・発展に関する取組は、9月のキックオフセミナー・記者発表を一つの契機に、学科・学部の構想の具体化、設置申請に向けた実務作業への着手が、専門家会議の開催とも並行して精力的に進められました。
 精華キャンパスでの研究・教育の新たな展開については、研究科での昨年度の検討を踏まえて、「ゲノムから生産まで、植物研究の一大研究拠点づくり」の構想がさらに膨らんできています。
 また、国際京都学センターの開設に向けては、連続シンポジウムの引き続く開催と、センターの在り方の検討が、京都府・学内双方において進められています。
 文学部研究室、図書館、総合資料館、国際京都学センターの合築棟に続く、本学の施設整備計画は、基本構想委員会を再開し、全体コンセプトの検討、府との協議等を進めており、延び延びになっていた専門家会議も近々開催の予定となっています。府の財政事情がその厳しさを一層増す中で、計画の具体化も難しさを増していますが、全体コンセプト、長期の計画をしっかり据えて、着実な進行を図っていくことが求められています。

              2016年、その先の展望 全体ビジョンの明確化

 今年・来年度、基本となる課題は、本年度から続く主だった取組を、それぞれ「リーディングプロジェクト」としつつ、それらを包括・牽引する新世代の京都府立大学の全体コンセプトを明確にしていくことにあります。この全体コンセプトを、2020年から始まる第3期中期計画期間を視野に入れた、「ポスト2020府大構想」と仮に呼ぶことにします。
 まだ、第2期中期計画期間の2年目にありながら、あえてその先を見通した展望を求めようとするのには、理由があります。
 2020年は、東京オリンピックの年にあたり、京都ではこれに呼応して「京都文化フェア(仮称)2016-2020」の開催に向けた動きが活発になっています。すでに、平成 26 年 10 月 6 日にオール京都の推進委員会が発足し、27 年 9 月に基本構想中間案を発表、今冬には基本構想を策定予定と聞いています。この2020年という年は、オリンピックの開催年というだけでなく、日本社会の行方にとって大きなターニングポイント、分岐点となる年と考えられます。近年急激に増加した外国人観光客は、オリンピックに向けてしばらくは増加が見込まれ、関連産業も成長が期待されます。オリンピック招致に関連した経済波及効果も一定は見込まれるでしょう。しかし、そのあとに、どのような成長・発展の基軸が想定されうるのか。人口の高齢化に加えて、その減少が進むことは、経済の縮小、社会保障における世代間の負担のバランスの変化などにもつながります。量的拡大による経済成長に代わる、定常化社会における質の高度化の議論などもありますが、まだ探索的探求の段階と言っていいでしょう。
 社会のインフラの老朽化が広範囲で進み、様々な施設の更新が必要となっていますが、国・地方自治体とも厳しい財政状況にあり、社会保障を中心とした新たな社会ニーズも拡大する中、問題は深刻です。原子力発電所の再稼働問題も含め、エネルギー・環境政策もきわめて論争的課題となっています。

 近未来の話としては、昨秋の120周年講演会の際に、本学卒業生である宮内謙ソフトバンク社長がモノのIT、IoTに触れておられましたが、近い将来、地球全人類の知能を超える究極のコンピューター「A・I」が誕生し、その「A・I」がその後更に自分よりも優秀な「A・I」を作りあげ、更にその「A・I」が次のもっと優秀な「A・I」を作り…といった具合に「A・I」が「A・I」を作り続けて爆発的スピードでテクノロジーを自己進化させ、人間の頭脳レベルではもはや予測解読不可能な未来が訪れるという話題もあります。この最初の「A・I」の誕生が2045年と予測されており、技術的特異点(シンギュラリティ)と呼ばれるポイントなのだと宮内社長もおっしゃっておられました。IoTの進化などは、単に情報・生活環境だけでなく私たちの日常の生活スタイルを大きく変え、価値観の変容を強く促すものとなることが指摘されています。

 増田寛也元総務相ら民間有識者でつくる日本創成会議が一昨年5月に打ち出した、2040年までに全国に自治体の49.8%にあたる896自治体で20~39歳の女性の人口が半分以下に減少し、将来急激な人口減に遭遇する自治体が5割に上るという、「消滅可能性都市」という考え方が、衝撃を持って受け止められました。これに呼応して、現在国・地方自治体ともども力を注いでいる地方創生、地域創生の取組の初期の成果も、2020年には一定の見極めが可能になってくるのではないかと思われます。

 一方、大学をめぐる状況では、「2018年問題」という呼称で、2017年まで横ばい状態が続いた後、18歳人口の減少が再度急激に進むことが予想されているとともに、大学進学率の上昇に伴い多様化した学生の受け入れと、大学教育に対する社会的要請にこたえるため、2020年前後に入学者選抜の方法・高大の接続の在り方を大きく変える改革が今準備されつつあります。このことと、あわせて、「学校(大学)から職業生活へ」の接続としての、キャリア教育、就職指導も産業構造や人材需要の更なる変化・変動に耐えうるものにしていく必要があります。

 社会状況・課題に話題が広がってしまいましたが、「ポスト2020府大構想」は、このような社会情勢に、本学が、地方自治体・京都府が設置する高等教育機関として、どのような体制と内容で向き合おうとするのか、これまでの蓄積を踏まえつつも、大胆に新しい発想に立って、構想していく必要があります。
 来年度当初には、検討のための素案を学長から提起したいと考えています。その後、学部等基礎単位と並行して、「ポスト2020府大構想」ワーキンググループ(仮称)による検討作業と全学的な議論を1年間集中的に進めていきたいと思います。
 「構想」ワーキンググループは、第3期中期計画期間に学内運営の中核を担うことになる世代の教員と、職員とによって構成することとします。「質の高い教育・研究」をもって、「地域に根差し、地域と連携する」なかで、「京都の発展に資する大学」を目指すという全体方向を、現状の各学部・研究科体制にとらわれない発想で、明確なビジョンのレベルにまで、その具体化を図っていきたいと思います。

             教職協働を進めるマネージメント改革について

 昨年度末、学校教育法改正に伴う、学内の諸規程の改正を行ったところですが、それに続くマネージメント(運営)面の改革は、まだ端緒的な対応にとどまっています。昨年秋、全学懇話会の場で教職協働をテーマにした意見交換の場を一度持ちましたが、本格的な検討はこれからです。大学に期待される役割がそのボリュームと質において大きくなっているなか、教職員の業務量も増大の一途をたどっています。一方、自治体財政の厳しさもあり、人的体制を量的に強化することには困難があります。より効率的な業務の執行体制や教職のスムーズな協働関係づくりなど、ここでも新しい発想に立った取り組みが必要です。

                       おわりに

 ここまで、主に教職員の視点から種々述べてきましたが、言うまでもなく、大学での学びの主体は学生です。この間、地域連携センター学生部会や、教養教育ワークショップ、3大学共同化における学生交流・連携など、新しい学生主体の活動が広がりを見せています。
 各種ボランティア活動や、インターンシップを通じての社会との交わりの深化など、この面でも、学生たちの新鮮な感覚・アイディアを活かした取組を広げていきたいものです。

 本日午前府庁で行われた知事の年頭訓示では、昨年、京都縦貫自動車道が全通し南北の物流、地域間交流の可能性が大きく広がったことも踏まえ、本年が実質的な地域創生元年にあたるとして、昨年策定された総合計画に沿った、京都ならではの魅力ある取組の力強い展開を訴えられました。今日、日本全体の人口減やグローバル化の広く、深い広がりという歴史上初の難しい局面にあたっており、先人の努力を引き継ぐと共に、新しいチャレンジが重要であることも強調されていました。

 本学も120年を越える豊富な蓄積を活かし、新たな歴史を刻んでいく画期に立っています。今年、2016年、平成28年が、本学に集う学生・教職員・府民にとって、安全と安心を土台とした、実り多い1年となることを心から願って、年頭にあたって学長としてのメッセージとさせていただきます。

                          2016年1月4日 京都府立大学 学長 築山 崇 


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