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研究

センター長メッセージ


京都和食文化研究センター長
小林 啓治(こばやし ひろはる)

 新型コロナウイルスがもたらす社会的影響は依然として大きく、2022年にはロシアがウクライナに侵略し、世界の食糧供給にも暗雲が垂れ込めています。先行きの不透明感が増す中で、気候変動への対策も待ったなしの状態です。課題が重畳化している世界の現状を憂えずにはいられません。人類と感染症の長い歴史をふまえつつ、急激に進んだグローバリゼーションがもたらした功罪にも目を向けながら、21世紀の「食」の問題を考えていく必要がありそうです。

 本センターでは、このような課題を念頭におきつつ、文学部和食文化学科が設立(2019年4月)されたことを踏まえ、和食文化研究の推進に一層力を注ぐことにしています。これまで、日本列島における食文化の起源、大陸との交流や各地域での多様な食材を活かした食文化の展開、食材の機能分析などの研究に取り組んできましたが、さらに、分野横断的に研究を深めていく必要があります。同時に、さまざまな要素からなる和食文化の複合性を、学術的に体系化していくことも大きな課題です。生産、流通、経営、料理術はもちろん、自然観、地域性と多様性、環境負荷などの問題も含めて、生活文化としての和食を「学」として構築するという課題に取り組みたいと思います。

 インバウンドが殺到し、世界的に和食が注目されているというコロナ前の好条件とはうらはらに、生活文化としての和食の未来は決して明るいとは言えません。ユネスコの無形文化遺産に和食が登録される過程で、関係者の中には「このままでは和食は滅びてしまう」という共通認識が生まれたと言われています。ただし、何をもって和食とするのかについては、さまざまな議論があり、それ自体が検討の対象です。「和食文化」を現代的な観点から評価し、生活文化としての和食をどのように継承・発展させていくのか、日本列島で展開されてきた多様な食文化を視野にいれながら研究を重ねていくことが、本センターの大きな課題です。
さらに、冒頭で述べた感染症、気候変動、政治的危機への対応を考えていく際、小規模な地域循環も重視しながら食と産業のあり方を模索し、災害・災厄に対して強靱で豊かな社会を構想していくことも必要でしょう。「和食文化」研究はその際の重要な切り口となることを確信しています。
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