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【学長メッセージ】~平成31年度 入学式 式辞~

[2019年4月11日]

自由な主体へと近づくチャンス

                                          平成31年4月6日
                                           学長 築山 崇
 
 新入生のみなさん、入学おめでとうございます。教職員一同、在校生とともに、心から歓迎します。また、京都府の山内副知事様、村田府議会議長様はじめ、公私ともご多忙のところ、ご臨席賜りました来賓の皆様に、厚く御礼申し上げます。あわせて、ご家族、関係者の皆様にも、心からお慶びを申し上げます。

 本年度は、11年ぶりの新学科として開設された、文学部和食文化学科に入学生を迎えることができたこと、心から嬉しく思います。新学科には、日本人の伝統的な食文化に関する研究・教育を進め、その価値、魅力を世界に発信していくことが期待されています。一期生のみなさんには、そのパイオニアとしての期待が寄せられています。自由で新しい発想によって、京都という特別な環境のもと、ぜひ楽しい学びを創っていってほしいと思います。
 
 さて、季節は春。桜はもとより様々な花に彩られ、優しい風に心和む世界がみなさんを包んでいることと思います。足元に目を向けてみると、新しい命が地表にあふれ出るように、みずみずしい緑の葉がそこかしこに勢いよく伸びてきています。湧きあがるこの自然のエネルギーは、私たちの命にも力を与えてくれます。学部入学生のみなさんは、緑豊かなキャンパスで始まる新生活で、これからの学生生活の英気を大いに養ってほしいと思います。
 大学院に入学されたみなさんも、思いを新たに、知の世界へより深く分け入り、社会が直面している数々の課題の解決の道へと、歩みを進めていってください。
 
 学部入学生のみなさんは、分厚い「学生便覧」を手に、二日間のガイダンスで、大学での学修や生活について、たくさんの情報を得たことと思います。表紙の裏の「京都府立大学の理念」の次のページ、「学長からのメッセージ」は、読んでいただけたでしょうか?「解き放ち、つかみとれ」というタイトルになっています。
 何を解き放ち、何をつかみとるのか、後ほど改めて読んでいただければと思いますが、みなさんに、「自由な主体へと近づく」ことを提起しています。
 自由という言葉には、英語のリバティとフリーダム、あるいは、消極的な自由と積極的な自由というように、二通りの意味合いがあることは、すでに聞いたことがあると思います。
 アメリカの自由の女神像は、「Statue of Liberty」です 。この女神像は、アメリカの独立100周年を記念して、独立運動を支援したフランスから贈られたものですから、ここでのリバティ(liberty)は、植民地としての束縛、様々な抑圧からの解放という意味合いを帯びていると考えられます。
 これに対して、フリーダム(freedom)は、思想信条の自由、表現の自由などという場合にあたり、個人が何ものにも束縛されず、自らの意志に沿って考え、行動するといった、より広い意味合いになります。
 「自由な主体へと近づく」という言葉に私が込めた思いは、もちろん、束縛からの解放にとどまらず、みなさんひとり一人が、自分自身の意志に沿って、願いや思いをかなえる可能性を獲得していくということにあります。「リバティからフリーダムへ」と言ってもいいかもしれません。
 束縛は、自分の外の世界にだけあるとは限りません。自分自身の中にあって、自分を縛っているものにも気づき、それを克服していく力が必要です。この力の源泉が、知の世界、学び、そして知的探求の営みとしての研究にあります。
 歴史を振り返ると、自由の獲得の歴史と、学びの歴史が表裏の関係にあることが見えてきます。フランス革命期の思想家にコンドルセという数学者がいます。コンドルセは、「公教育の父」と呼ばれ、「教育は人が学校を卒業するその瞬間に、彼らを見捨ててしまってはならないということ、教育はすべての年令にわたって行われるべきである」と、学校教育だけでなく、生涯にわたる教育、学習の意義を説いています。「自由・平等・博愛」を掲げた、フランス革命期になされた提起であり、自由と学びの関係を示す一つの例といえます 。 
 
 大学は、高校までとは大きく異なる世界です。社会との接点を多様にもち、多くの刺激と新たな発見の可能性に富んだ知の世界、それが大学です。自分次第でいくらでも広がる生活世界、多様な人々とのつながりを活かして、大いに学び、自由の翼を広げていきましょう。
 大学院に進学・入学されたみなさんの場合、多くの人にとって見慣れた大学の風景ですが、みなさん自身は、研究という新しい知的探求の世界の一員となります。他大学から入学された方、社会人として種々の経験を積まれた方もいます。知的交流の多彩な展開が大いに期待されるところです。

 次に、京都府立大学の社会的使命について、お話したいと思います。
本学では、大学の目的・あり方の基本を成文化した「理念」とそれに基づく「行動憲章」を平成20年(2008年)に定めています。これらは、ガイダンスで配布された「学生便覧」、あるいは大学ホームページなどに掲載されていますので、詳細はそちらを是非一読いただきたいと思いますが、「理念」では、「京都府立大学は、京都府における知の拠点として、広く人文・社会・自然の諸分野にわたる真理を探究し、教育するとともに、その成果を健康と福祉の向上、産業の振興、文化の継承発展、国際社会の調和ある発展に活かすことを目的とする」と定めています。また、「行動憲章」の前文では、「長い文化的伝統を持つ京都の地において、本学が百十余年にわたって府民に支えられつつ学問の府として活動してきた歴史」に触れ、「地域社会の発展と府民生活の向上、さらには人類の幸福に貢献します」と謳っています。みなさんの学びは、みなさん一人だけのものではなく、多くの府民に支えられた、地域社会にとっての宝でもある、ということを是非心に留めておいていただきたいと思います。

 ここでひとつ、みなさんにぜひ心掛けておいてほしいことがあります。3年あまり前、本学で急性アルコール中毒による死亡事故が発生しています。絶対にあってはならない悲しい出来事で、本学構成員一同、安全・安心な学生生活を守るという思いを一層強くし、様々な取組を進めています。みなさんも生活の中に潜む様々な危険について認識を深めていくようにしてください。

 すでにガイダンスで聞いていただいているように、京都学・歴彩館、植物園、コンサートホールなど魅力的な施設を擁する、北山文化環境ゾーンという恵まれた環境に本学はあります。教養教育は、府立医科大学、京都工芸繊維大学、本学の三大学の学生が一堂に会して学ぶ体制が、専用施設である稲盛記念会館を拠点に、全国でも他に例を見ない新しい学びのかたちとなって実現しています。京都の歴史・文化・自然について学ぶ京都学科目、京都ならでは、本学ならではの、魅力ある科目群も用意されています。これからの時代そして世界が求める、知性や感性を大いに磨いていただけることと思います。
 また、京都府が奈良県、大阪府と境を接する精華町には、農場や大学と産業界、自治体との連携拠点施設などからなる精華キャンパスがあり、さらに北部南丹市美山町、京都市右京区大枝など府内六か所に森林科学の演習施設を擁し、まさに府内全域がみなさんのキャンパスとなっており、学生のみなさんが様々な地域に出かけて、海や森といった自然、地域の特色ある産業などに触れて、体験的に学ぶ機会が京都府や府内市町村、企業や地域団体などの支援・協力によって、豊富に設けられています。

 みなさんには、このような本学ならではの恵まれた条件を活かして、地域に学び、地域とともに成長していく、アクティブな大学生活を送ってほしいと思います。

 結びに、新入生のみなさんへの心からの歓迎と、共に未来を創る熱い思いを添えて、ご列席のみな様のご健勝と益々のご発展をお祈りし、式辞といたします。
                     

 

1 像の正式名称は、「Liberty Enlightening the World」ですが、一般に「Statue of Liberty」と呼ばれています。また、像本体の製作費用はフランスでの募金で賄われ、1878年のパリ万博の折には、像の頭部が展示されるなど寄付金集めのキャンペーンも行われました。その後胴体部分の完成を待って、アメリカに運ばれ、台座の建設にあたってはアメリカ国民の募金活動も行われています。1886年建立。
2  「公教育の全般的組織にかんする報告書及び法案(1792.4.20-21)」の中で、教育の目的を「政治的平等を現実のものにする方策を保証すること」としたうえで、「われわれの基本的立場」として、教育を平等で全員に行き渡るようにすることについて述べた後に、このように述べています。
 この「報告書及び法案」は、コンドルセ他著/阪上孝編訳『フランス革命期の公教育論』 2002岩波文庫 に収録されています。


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