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葉緑体による植物免疫応答の制御機構を発見

[2012年6月28日]

生命環境科学研究科 椎名教授ほかの研究による新しい発見です

                      葉緑体による植物免疫応答の制御機構の発見

                                                               平成24年6月28日

 

 京都府立大学(野村裕也元大学院生、椎名隆教授、佐野智講師)と、名古屋大学、大阪大学等の研究グループは、今回、葉緑体を介した新しい植物免疫活性化機構を発見しました。本研究で、病原体の感染情報を素早く葉緑体に伝達する機構と、葉緑体が免疫転写プログラムを活性化する新しいメカニズムが明らかになりました。これは、これまで知られていなかった新しい免疫制御機構であり、病害抵抗性植物や植物免疫活性化剤の開発につながることが期待されます。

 この研究成果は日本時間の6月26日に英国のNature姉妹誌「Nature Communications」に発表されました。

【ポイント】

・  葉緑体への病原体シグナル伝達機構を解明

・  葉緑体免疫シグナルによる植物免疫活性化機構の発見

・  新しい病害抵抗性植物や植物免疫活性化剤の開発へのヒント

【論文発表】

タイトル:Chloroplast-mediated activation of plant immune signaling in Arabidopsis

著者:Hironari Nomura, Teiko Komori, Shuhei Uemura, Yui Kanda, Koji Shimotani, Kana Nakai, Takuya Furuichi, Kohsuke Takebayashi, Takanori Sugimoto, Satoshi Sano, I Nengah Suwastika, Eiichiro Fukusaki, Hirofumi Yoshioka, Yoichi Nakahira & Takashi Shiina

掲載: Nature Communicationsに6月26日付け掲載。

 

【概要】

 農作物の病気によって世界の食料生産の10〜15%が失われており、植物の耐病性を高めることは、世界の食料戦略上大変重要な課題となっています。光合成器官である葉緑体は、植物免疫応答の中心的シグナル分子であるサリチル酸(SA)や活性酸素種の生成の場ですが、植物免疫応答と葉緑体の関係は十分に分かっていません。一方、動物細胞では、ミトコンドリアがプログラム細胞死(アポトーシス)の司令塔として重要な働きをしていることが知られています。

今回明らかにされた葉緑体による植物免疫活性化機構の概略を図に示します。

 

 病原体は特徴的な分子パターン(細菌の鞭毛タンパク質(flg22)や糸状菌細胞壁構成多糖(キチン)など)を持っています。植物細胞はこれらの病原体の特徴分子を認識し、細胞内シグナル伝達系や免疫転写ネットワークを活性化し、その結果合成されたサリチル酸が、抗菌タンパク質やファイトアレキシンの合成、気孔閉鎖などの一連の防御応答を誘導します。また、感染細胞が自殺することで病原体の拡散を防ぐ、過敏感細胞死という現象にもサリチル酸が関係します。今回、(1)病原体の特徴分子のシグナルが葉緑体にも伝達され葉緑体内で特徴的なCa2+シグナルを誘導することと、(2)葉緑体がチラコイド膜のCASタンパク質を介して免疫転写ネットワークの活性化を促進することを見いだしました。さらに、(3)葉緑体で発生する一重項酸素シグナルが葉緑体免疫シグナルに関係している可能性も明らかにしました。葉緑体はマルチストレスセンサーと考えられており、病原体の感染情報を光条件や環境ストレス情報と統合することで、感染防御機構を総合的に制御している可能性が考えられます。これは、葉緑体を中心とした新しい免疫制御機構の発見であり、この経路を強化した病害抵抗性作物の開発や、この経路をターゲットとした植物免疫活性剤の開発につながることが期待されます。 

連絡・問合わせ先: 京都府立大学生命環境科学研究科教授 椎名隆 075-703-5449 shiina@kpu.ac.jp


葉緑体による植物免疫応答の制御機構を発見への別ルート

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