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葉緑体光合成遺伝子の発現を制御する新しいメカニズムを発見しました

[2012年4月24日]

葉緑体光合成遺伝子の発現を制御する新しいメカニズム

                                                                                                                                             平成24年4月24日

 八木祐介生命環境科学研究科博士後期課程大学院生(現九州大学研究員)、椎名隆同教授らの研究グループは、今回、葉緑体の遺伝子発現を司るRNA合成酵素と葉緑体遺伝子の相互作用を直接的に確認することに世界で初めて成功しました。この研究により、光合成遺伝子の光に応答した発現制御や、新しいRNA合成酵素アクセサリータンパク質による葉緑体の発達制御などの実像が明らかになりました。また、葉緑体の発達や光合成遺伝子の発現を制御することで、作物の生産性や環境適応性を向上させる研究に結びつくことが期待されます。

本研究成果は、4月24日米国科学アカデミー紀要電子版に発表されました。

書誌情報

Eukaryotic-type plastid nucleoid protein pTAC3 is essential for transcription by the bacterial-type plastid RNA polymerase.

Yusuke Yagi1, Yoko Ishizaki1, Yoichi Nakahira1, Yuzuru Tozawa2, and Takashi Shiina1

Proc Natl Acad Sci USA

1京都府立大学生命環境科学研究科

2愛媛大学無細胞工学研究センター

www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.1119403109

研究の概要

 植物の葉緑体は、元々光合成バクテリアの一種シアノバクテリアが植物の祖先細胞に共生して進化したもので、核ゲノムとは別に独立した葉緑体ゲノム(DNA)を持っています。葉緑体ゲノムには、約50個の光合成遺伝子がコードされており、PEPと呼ばれるバクテリア型のRNA合成酵素によって転写されます。一方、光合成遺伝子以外の遺伝子はNEPと呼ばれるファージ型の別のタイプのRNA合成酵素によって転写されます。組織や光環境に左右されず一定の活性を保つNEPに対して、PEPによる光合成遺伝子の転写は葉に限定して起こり、光による強い活性化を受けます(光合成遺伝子は根や花弁などの非光合成組織では転写されません)。しかし、葉緑体RNA合成酵素と葉緑体DNAの相互作用の実像は分かっていませんでした。

 この研究では、葉緑体RNA合成酵素PEPとDNAの相互作用をChIP(クロマチン免疫沈降法)という方法を用いて直接的に確認することに世界で初めて成功しました。図1は、その結果を示したもので、P、C、Tで示した光合成遺伝子psbAの遺伝子領域に、葉緑体RNA合成酵素PEPが特異的に結合していることが分かります(赤:PEPの結合活性、光照射下)。一方、その結合は光に強く依存しており、暗所ではpsbAを含む光合成遺伝子領域へのRNA合成酵素の結合はあまり見られません(マリンブルー:PEPの結合活性、暗黒下)。この研究によって、葉緑体RNA合成酵素PEPが光によって活性化され、光合成遺伝子を特異的に探し出して結合することが分かりました。未解明であった葉緑体光合成遺伝子の光誘導転写のメカニズムが明らかになりました。

 また、本研究では葉緑体RNA合成酵素に結合する新規のアクセサリータンパク質pTAC3を同定しました。pTAC3は葉緑体RNA合成酵素PEPに結合するタンパク質で、PEPと同じパターンで光合成遺伝子領域に相互作用します(図1)また、pTAC3は葉緑体核(核様体)に局在し (図2A)、その変異体は葉緑体が発達せずアルビノ(白色)になります(図2B)。以上の結果から、pTAC3は葉緑体RNA合成酵素PEPの新規のアクセサリータンパクであり、葉緑体の発達に関わっている可能性が考えられます。興味深いことにpTAC3はシアノバクテリアや単細胞藻類には存在せず、根などの器官分化がはっきりするコケ以上の高等植物に存在します。陸上に上がった植物が、根、葉、花などの複雑な器官を作るとともに、光などの環境に適応するために獲得した新しい制御因子である可能性が考えられます。

図1

図1 葉緑体RNA合成酵素PEP-α(赤)および新規アクセサリータンパク質pTAC3(青)の明所における葉緑体DNAへの結合。暗所では、葉緑体RNA合成酵素(茶)もpTAC3(マリンブルー)も、葉緑体DNAへの結合が見られない。

図2

図2 (A) 緑色蛍光タンパク質GFPと融合させたpTAC,-GFPは、葉緑体核(DAPI)と同じ局在を示す。
(B) pTAC3変異体では葉緑体分化が起こらず、白色の植物体となる。

連絡・問合わせ先:京都府立大学生命環境科学研究科教授 椎名隆 075-703-5449 shiina@kpu.ac.jp


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