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【学長メッセージ】2017年 年頭にあたって

[2017年1月4日]

2017年頭メッセージ

はじめに 世界の激動と日本

                                    2017年1月4日 学長 築山 崇 

 明けましておめでとうございます。昨年の始まりは飲酒事故の衝撃冷めやらぬ中でしたが、今年はいろいろ難しい局面ながら、まずは、ふつうに新年のご挨拶を申し上げられることを嬉しく思います。日頃の皆様のご尽力に感謝申し上げますとともに、今年もどうかお身体に気をつけられて、それぞれのお力を存分に発揮していただきますよう、お願いいたします。

 さて、目を世界に向けると2016年は、シリア紛争による難民問題も絡んだEUの動向やアメリカ大統領選での大方の予想を上回る結果など、グローバル経済・社会の様相が大きく変わりつつあることを感じた1年だったように思います。

 国内では、4月に熊本、10月には鳥取と大きな地震が相次ぎ、東日本での余震もまだ続いています。年末には糸魚川で大規模な火災がありました。この火災は、144棟、4万㎡の焼損という大きな規模でしたが、幸い死者は無く、けが人も消火活動中の消防士9人を除くと住民の被害は2名にとどまり、けがの程度も軽かったと言います。人的被害が少なかったのは、防災無線の普及と隣近所のつながりの強さだったと指摘されています。安心して住み続けられる地域づくりにとって、住民相互のつながりや条件整備がいかに大切であるかをあらためて実感した出来事でした。

 本学でも、年末に消防防災訓練を初めて授業時間中に行いました。情報集約や避難誘導の方法など検証を進め万一に備えるとともに、施設の更新、耐震化や減災対策等の強化に向けた取り組みを強化していきたいと思います。

 今年2017年、海外では、3月末までにイギリスのEU離脱交渉が始まり、4月にはフランスの大統領選挙も予定されており、新大統領が就任するアメリカと並んで、EUヨーロッパの動きが引き続き注目されます。国内では、自己の特定個人情報、提供記録が確認できる「マイポータル」の開設や公共施設の利用カードのマイナンバーカードへの一本化、全国の小中高等学校の生徒3.6人に1台の情報端末の配備など情報関係の話題が多くなりそうです。

 本学では、京都学・歴彩館のオープンに伴い、附属図書館、文学部の移転という施設面で大きな変化が見える年となりますが、移転後の旧施設の利活用も含め、施設の計画的整備に向けた検討がいよいよ焦点となってきます。

 ところで、昨年は、人工知能AIや乗用車の自動運転の話題がよく聞かれましたが、技術の進歩・イノベーションへの期待よりも、総人口が減少局面に入り、市場規模が小さくなるなかで、成長の新たな領域を求める力が社会全体に強く働いているという印象を持ちました。IoTによる便利で快適な生活の実現だけでなく、更なる欲望を満たすために市場の拡大を目指すことの帰結についても、特に環境と人間の関係という視点から、しっかり見ておく必要があるように思います。

 困難な社会状況を切り拓くために、新しい経済の在り方が必要とされることは、必然と言っていいと思いますが、大学に対する社会の期待の増大が、このイノベーションの推進とつながっていることは、自律的な教育研究機関としての大学にとっては悩ましい問題です。後で、詳しく触れますが、昨今の大学改革の一連の動きは、教育研究の高度化への内在的な動因以上に、経済社会の構造的変化という外因によるところが大きく、公立大学としては、設置団体である地方自治体の政策ステージの変化と結び付けて、理解していくことが肝要となっています。

 

大学改革政策の経過と大学の位置

 新年早々堅い話になって恐縮ですが、今日の大学の社会的位置(ポジション)について、この機会にみなさんと共有しておきたいと思います。

 大学改革の動きが活発となって4半世紀。この間の経緯は3つの期間・段階に整理することができます。

 第一は、規制改革、市場化、NPM、PDCAサイクルといった、制度整備の段階で、1991年の大学設置基準の大綱化・自己点検・評価の努力義務化にはじまり、2004年の認証評価制度の導入、大学法人制度の導入に至る期間です。

 第二の時期は、「大学の機能別分化」に象徴される大学の多様化や、教育の実質化、学生目線・地域目線での機能充実の時期ととらえられます。2005年の中教審答申「我が国の高等教育の将来像」に始まり、翌年の教育基本法全部改正、2008年の中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」で「3つの方針の明確化」と「学士力」の提起が行われ、2011年教育情報公表の義務化、2012年中教審答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を養成する大学へ~」、そして2013年の大学COC事業へと至る期間です。

 第三の時期は、改革システムの改革、大学ガバナンスといった、いわば「メタ改革」の段階で、これは、2014年の中教審審議のまとめ「大学のガバナンス改革の推進について」で具体的に提起され、本学でも同年度後半に規程改正の対応を進めた改正学校教育法の施行は、みなさんの記憶にも新しいところです。

 もう少し、詳しくそれぞれの時期の改革動向を見てみましょう。

 第一の時期について、2010年から4年間文部科学省の高等教育局長を務められた磯田文雄氏が著書『教育行政』のなかで、「2004年度までで、我が国の高等教育計画は終了する」と述べています。ここでいう「高等教育計画」とは、18歳人口がピークを迎える1992年以降の定員管理を念頭に置いたものです。2003年には、大学設置の抑制方針は撤廃され、その結果、入学定員未充足の大学・短大が増加する一方で、新増設が進むという状況が生まれました。そうした流れの中に、社会への説明責任を果たすための自己点検・評価活動の義務化、質保証システムとしての認証評価制度も位置付けられます。

 このような背景の中で、より具体的な大学改革の在り方がしめされているのが、2000年の大学審議会答申「グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について」です。

 そこでは、高等教育制度及び教育研究水準の両面にわたって国際的な通用性・共通性の向上と国際競争力の強化を目指した改革を進めるため五つの視点に立って具体的改革方策が提言されていました。

 ①グローバル化時代を担う人材の質の向上に向けた教育の充実 ②科学技術の革新と社会,経済の変化に対応した高度で多様な教育研究の展開 ③情報通信技術の活用 ④学生,教員等の国際的流動性の向上 ⑤最先端の教育研究の推進に向けた高等教育機関の組織運営体制の改善と財政基盤の確保 という、5点です。

 5番目の組織運営体制の改善に対応するのが、国・公立大学の法人化ですが、そこでは、自律的な運営の確保が謳われる一方、経済社会の構造改革プランを背景に、民間的発想のマネジメント手法、学外者の参画による運営システム、非公務員型による弾力的な人事システム、第三者評価による事後チェック・目標管理といった手法が導入されました。

 第二の時期に入って、2008年のいわゆる「学士課程答申」では、学士課程教育の構築が,我が国の将来にとって喫緊の課題であるという認識に立ち、 第一に,グローバルな知識基盤社会、学習社会を支え,より良いものとする「21世紀型市民」の育成、第二に,高等教育のグローバル化が進む中,学習成果を重視する国際的な流れを踏まえつつ,我が国の学士の水準の維持・向上のため,教育の中身の充実を図っていく必要を、第三に,いわゆる大学全入時代を迎えるなかで教育の質を保証するシステムの再構築が,経済社会からは、職業人としての基礎能力の育成,さらには創造的な人材の育成が強く要請される状況への対応、第四に,教育の質の維持・向上を図る観点から,大学間の協同の必要が提起されています。 

 このあと、より直接的に今日の改革動向につながる一連の動きが出てきます。

 国立大学が法人化後3期目の中期計画期間に入る2012年には、「大学改革実行プラン」において、“社会の変革のエンジンとなる大学づくり”を看板に、大学改革の方向性について、「激しく変化する社会における大学の機能の再構築として、大学教育の質的転換入試改革、さらに、グローバル化に対応した人材育成、地域の核となる大学づくりCOC)、世界的な研究成果とイノベーションの創出、大学の機能の再構築のための大学ガバナンスの充実・強化などが、強調されています。      

 続いて、同年末には、中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」が出され、これを受ける形で、翌2015年1月に「高大接続改革実行プラン」が文部科学大臣決定として示され、省令で、重点施策とスケジュールが提示されます。

 このプランに沿って「高大接続システム改革会議」が2015年度に開催され、「最終報告」が2016年3月末に出されます。そこでは、能動的学習、学修時間増、評価の充実などの視点に立った大学教育改革、「学力の3要素」を多面的・総合的に評価し、多様な背景を持つ受検者の選抜を行う大学入学者選抜改革が提起され、センター試験に代わる新たな共通試験の具体的な問題イメージの検討も行われています。

 大学教育改革については、3ポリシーの策定・見直しのガイドラインが、中央教育審議会大学分科会大学教育部会から示され、本学においても、今年度の調査と見直しの作業となっているわけです。

 

設置団体の政策と公立大学の使命

 次に、公立大学とその設置団体である地方自治体をめぐる情勢と課題に話を移します。

 「設置団体の政策ステージの変化」として、3つの段階を見出すことができます。

 第1期は、1988年からの15年間で、地域活性化や地元進学先の不足、地域ニーズを踏まえた人材育成などの課題を背景に、新たな理念での大学構想のもと設置が急増した時期です。第2期は、2004年からの10年間で、この時期は、行財政改革、公務員定員の削減、大学組織・ガバナンス改革を課題に、法人組織の設計・整備、大学・学部の改組・統合、中期目標づくり、法人評価などを伴って、公立大学法人の設置が進められた段階です。第3期は、2014年以降で、地方創生・地域活性化、公立大学資源の積極活用、私立大学法人の公立大学化を課題に、公立大学の機能強化・活用、大学管理・運営人材の育成、施設・設備の計画的更新などの政策がとられる時期とされています。

 もちろん、これらは全体としての状況であって、公立大学の場合、個別の状況に多様性が大きいことは言うまでもありません。

こうした流れのなかで、今日、大学改革と機能強化に必要と言われているのが運営体制の整備と、経営力の強化であり、これに、大学・大学院教育の抜本的改革と、産学公連携活動強化のための体制整備、財務状況も含めた積極的な情報公開や、財源の多様化といった内容です。

 公立大学としての在り方については、総務省の以下のような見解が参考になります。

・公立大学は地方公共団体が設置する大学として、率先して地域における課題の解決に取り組んでいく使命を有しており、これまでの役割をさらに越えて、設置団体と連携し、地域の中核となって、「雇用創出」・「若者定着」に係る取組の拠点として具体的な成果を上げることが、より一層求められる。

・一方で公立大学においても、グローバル化の流れに対応した世界水準の教育・研究を進め存在感を示すことが、ひいては地方創生を含む地域の振興に寄与するものと考えられるので、教育・研究という大学としての基礎力を高めることも必要。

 教育研究は、基礎力というより大学の使命そのものであり、地域課題の解決への取組は、その成果を通じた社会的貢献というとらえ方が、大学人としての率直なところですが、今日の大学、特に公立大学に向けられている社会的眼差しのベクトルはむしろその逆であることを銘記しておかねばなりません。

 

京都府立大学の目指す方向

 こうした社会情勢を踏まえて、府立大学の2016年を振り返ってみると、基盤強化の進展と未来創造への胎動の1年だったように思います。昨年当初の思いとしては、第2期中期計画期間の後半に向けて議論の進展を目指していたのですが、昨年7月にスタートした「KPU未来工房」のワークショップでの全学横断的な研究プロジェクトの検討など、大学の新たな全体像構築に向けて、その緒に就いたところにとどまっています。とは言え、拙速は避け、組織運営の新たな工夫を含め、しっかりと議論していきたいと思います。

 本年度受審した7年に一度の機関別認証評価では、基準のクリア―は確実なものの、成績評価の基準の明確化とその周知、3ポリシーの充実・見直し、施設の老朽化対策などいくつかの改善課題も改めて明確になりました。男女共同参画のアクションプランの策定、地域連携センターと京都政策研究センターの統合・機能強化プランの策定、3つのポリシーの改訂作業、京都市の助成金も活かした国際交流の取組の前進などは、基礎体力の強化の意味を持っています。

 これ以外にも、学内予算の機動的配分の試みとして、一般研究費から大型研究備品や共通教育経費、研究支援などへの振り替え、ACTRの選定基準の見直しなども行い、先生方には急な変更でご迷惑をおかけして申し訳ありませんでしたが、最近の設置者との協議等などを通して、大学全体としてのプレゼンス向上の成果も少しずつ見えてきています。

 2017年は、これまでの厳しい条件下で自助努力によって進めた基盤整備の上に、教育・研究の進化・発展を是非とも実現していくため、力を注いでまいりたいと思います。

 認証評価の訪問調査の講評の際に、「学生と教職員の距離も近く、温かい雰囲気で、伝統ある大学のよさが感じられる」という全体的印象が語られていましたが、それは、今日の一般的な大学改革の流れの中にあっても、「理念」と「行動憲章」のもとで、自律的な教育研究機関としての文化が生きていることを意味していると思われます。

 私たちが目指すべきは、この伝統的な大学らしさを大切にしつつ、同時に、変動激しい今日の社会が大学に求めるものにも、的確かつ柔軟に応えていくという方向です。

 最後に、今後の方向性を、ふたつの柱で提起しておきたいと思います。

 第一は、特色強化の柱です。「府民に支えられて、質の高い教育・研究で地域に貢献する大学」をトータルコンセプトに、リーディングプロジェクトとして、国際京都学、和食文化のプロジェクト、精華キャンパスの将来構想とも結んだ植物総合研究、そして、生命・環境、さらには21世紀の福祉社会づくりに関わる種々の学際的な研究からなる柱です。さらに、設置団体と協調して進めていく地域創生では、当面COC+事業を軸に、地域課題解決・人材育成に取り組んでいきたいと考えます。

 これらは、先の総務省の提起の第1の論点にあたり、次の柱は、第2の論点、大学としての基礎力強化にあたるものです。

 この柱では、研究支援体制や外部資金を含む研究基盤の強化、教育の質保証体制の確立、設立団体との関係強化による財政基盤の強化、法的義務化もあり、すでに事務局で学習活動を始めていただいているSDも含めた人的体制の充実、そして施設の計画的整備などが課題です。

 

結び

 本日10時から府庁で開かれた知事の年頭訓示では、府の諸事業が実を結んだ2016年とされたうえで、「国際交流首都京都」として、「文化創生」により京都の価値・日本文化を発信していくという方向性、「交流」と「文化」から生み出される「京都力」を存分に発揮し、京都から世界へとつながっていく新たな「共生社会」の実現に向っていく方向性、そして、様々な取組の実行・スピードが強調されていました。「文化創生」、「共生社会」というキーワードは、本学の第一の柱と共鳴する内容でもあります。

 「学問の府としての歴史的・社会的使命を認識するとともに、京都府民に支えられる府民のための大学であることを自覚し、京都に根ざした魅力的で個性ある京都府立大学の創造に向けて、新たな飛躍をめざす」という理念のもと、対話と相互理解に基づく大学運営と社会に開かれた大学づくりを目指す行動憲章を指針に、難しい局面を切り拓くため、一層の工夫と努力を重ねてまいりたいと思います。

 長くなりましたが、これから1年、どうぞよろしくお願いいたします。


【学長メッセージ】2017年 年頭にあたってへの別ルート

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