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栗栖正博氏と東あかね教授による講演「京の料理:ハレの料理とケの料理」が行われました(平成27年度・リカレント学習講座・京都「和食の文化と科学」(第五回)

[2016年2月23日]

栗栖正博氏と東あかね教授による講演「京の料理:ハレの料理とケの料理」が行われました(平成27年度・リカレント学習講座・京都「和食の文化と科学」(第五回)

リカレント学習講座・京都「和食の文化と科学」の第五回として、日本料理アカデミー副理事長にして「たん熊北店」主人の栗栖正博氏と、京都和食文化研究センター副センター長の東あかね教授による講演「京の料理:ハレの料理とケの料理」を行いました。ハレ(祝いの席)とケ(ふだん)の食事において、それぞれ大切なこと、そして両者のつながりについて、料理人と医師(予防医学)という異なる立場から、和食の「豊かさ」を浮き彫りにする講座となりました。以下、その一端をご紹介いたします。

ハレの料理:栗栖氏によるハレの日の演出

栗栖氏講演の光景

時間と場所のおもてなし

栗栖氏は、「たん熊北店」の会席料理におけるハレの日を演出するための様々な工夫について、実際に供される八寸の美しい料理写真を用いて説明されました。

料亭で最初に出される八寸は季節感を演出した酒の肴の盛り合わせのこと。はじめに供する料理が、一品ではなく盛り合わせであることには理由があります。ハレの日の会席において、お客様同士のおもてなし、とりわけ最初の場を和ませる大切な時間に、給仕などの邪魔が入らない程度の時間を掛けて食すことができることを考慮し、このような前八寸が出されているのです。

季節の変化をお膳の中に落とし込む

料理自体にも心を和ませる工夫が凝らされています。栗栖氏は、自らが育った嵯峨・岩田山の美しい景観を引き合いに出されて、その景色の季節ごとの変容を料理に落とし込むことが自らの料理観の基礎を成しているとお話しをされました。

たとえば春。桜の季節の八寸には桜の花弁が散らされています。これは桜そのものではなく、淡く色づけられた百合根。季節の光景と旬の食材が重なり、目にも舌にも存分に季節を堪能できる仕掛けが凝らされています。

春の八寸のスライド

祝いの場の工夫

婚礼に関する会席の場合、お椀には、蛤に淡路結びの大根と人参が添えられています。蛤は「貝合わせ」の遊びとして知られているように、貝殻の一対は決して他のものとは合わないことに由来する縁起物、淡路結びは、「結びきり」とも言われる一度結ばれると決してほどけないことに由来するめでたい様式によって、料理による婚礼を祝う演出となっているのです。

婚礼の椀もの

栗栖氏のハレの日の料理の演出には、濃やかなおもてなしの心が息づいていることがわかります。

ケの料理:ふだんの食事からの健康づくり

東教授は、ケの料理、すなわちふだんの食事に事欠く人が、この地球上に約10億人、つまり7人に1人の割合で存在することから話し始めました。第1回の講座で山折哲雄先生より、「現在の食の問題」を「食べられないこと」から考察することをご提案いただいたからです(リンクはこちら)。
東先生講演の光景

飽食の時代のコメ離れ

日本人のふだんの食事の変遷がよくわかるデータがあります。それは終戦直後、国民を飢餓から救うために実施された「国民健康・栄養調査結果」であり、それは現在に至るまで引き継がれています。その結果によると、食に関する興味深い結果が具に明らかになります。ここ70年間の推移を追ってみると、例えば動物性脂質摂取量は約5倍、タンパク質は約4倍、カルシウムは約2倍増えているのに対し、総エネルギーと炭水化物摂取量は減少しています。つまり、これほど飽食の時代とは、コメ離れと同時進行でした。

パンとご飯、そして菓子

一世代あたりのパンと米、そして菓子の支出金額の推移を示したデータがあります。それをみると、主食として不動の地位を保っていた米は、昭和62年に菓子に抜かれ、そして平成23年、パンにも抜かれました。

朝食をみてみましょう。平成27年に、京都市内のある小学校の4年生の朝食を調べたの調査では、ご飯よりパンの方が多いことが分かりました。また、菓子パンと答えた生徒が20%もいたのです。

和食による処方箋

ここで想起されるのは、今年度の第3回リカレント学習講座で、川島隆太先生がお話しされたご飯食の朝食の効能です。朝食の質と脳活動の対応。その質とは主食と主菜・副菜の数。和朝食が脳を活性化していることをお話いただきました。(詳細は、報告文に記載していますので、興味をお持ちの方は以下のリンクをご参照ください)。

所得格差と健康・栄養格差

昨今、低所得者の増加と、それによる健康・栄養格差が話題になっています。しかし、それを解決する方法はあると東教授は指摘します。

以下のスライドは、とある家庭のふだんの夕食。栄養バランスとしては、理想的な食事です。とはいえ、料理は高価ではないどころが、むしろ質素なもの。食と健康についての知識があればふだんの食事をお金をかけずに健康的にすることができます。

ケの料理の一例

対談

おふたりの対談の光景

ハレとケの関係

休憩後はおふたりの対談も行いました。

じつはこの講座に先立って、栗栖氏が10年に渡り実践されている小学校における食礼の授業を東教授が見学しました。そのなかで、栗栖氏は「ほんもの」の和食を子どもたちに体験してほしいとの思いで、昆布とかつおで出汁を取って吸い物を作る調理実習が行われました。子どもたちへの食育は親にも影響するようで、同じように、出汁を取って作るようになった家庭もあるようです。とはいえ、栗栖氏は、料亭のやりかたが家庭で同じようにすることはできないけれど、と留意もされていましたが…。

すべての人々が健康的な食事がとれる社会をめざして

ハレの料理がケの料理に上記のように幸福な影響を及ぼすこともあれば、そうでないこともあるでしょう。

とはいえ、両者は、生活の「豊かさ」という点に関しては無関係ではありません。たとえば芸術鑑賞は、日常生活とは異なってはいても、その体験は心を豊かにし、日常に彩を添えます。料理もまた同じ。心を豊かにすることと身体を健康にすることは不可分に結び付いています。東教授はこう言います。「ハレの料理は心を豊かにし、ケの料理は身体を作ります」。また「食を以て、和と為す」という言葉も紹介。心と身体の調和はいつも食から。ハレの料理とケの料理、どちらにも深く思索を巡らすことができる講座となりました。

ともあれ、本年度のリカレント学習講座も、全5回を無事に終えることができました。

最後に宗田好史センター長が、閉講の挨拶を申し上げ、来年度も10月より講座を開講する予定であり、引き続きの受講のお願いをいたしました。

129名の受講生のうち、5回の講座すべてにご出席いただいた65名の方に、綾部市黒谷の和紙を使った修了証書をお渡しました。熱心にご受講いただきました皆さま、ホームページをご覧いただきました方に御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

賞状授与の光景

お問い合わせ

京都府立大学京都和食文化研究センター京都和食文化研究センター担当

電話: 075-703-5251 FAX: 075-703-5149


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